JFFは発眼卵をWVB(ウィットロック・バイバート・ボックス)を用いた埋設放流する活動を通して釣り場と釣り人を育てています
発眼卵は、稚魚、他の状態の卵と比べ、比較的扱いやすく強いのでこの状態の卵を埋設放流に使用します。卵の時期から川に埋設放流され人間の手から離れるため、天然魚に近い魚が育つと考えられています。
WVBは発眼した卵(受精後卵の中に眼が発生し孵化直前の状態、人間の目視により眼が確認できる)を川に埋設放流するために考え出されたBOXです。
発眼した卵は稚魚、他の状態の卵と比べ、比較的扱いやすく強いのでこの状態の卵を埋設放流に使用します。この発眼卵をWVBの上の部屋に入れます。孵化した魚は下の部屋に落ちていきサイノウが吸収され自分で泳げるようになるとWVBから出られるように各部の隙間の大きさが考えられています。
卵の時期、孵化してまもなくで遊泳能力が少ない時期の状態をWVBの中で過ごすことにより外敵から守ることができます。孵化率は90%以上です。卵の時期から川に埋設放流され人間の手から離れるため、天然魚に近い魚が育つと考えられています。WVBの箱の中で育てるため観察が容易です。
発眼卵を入れたWVBを川に埋設します
放流の前にはいろいろと手続きが必要です。管理者の許可を得ることと、十分な配慮を行わないと違法放流となってしまうばかりか、自然を壊してしまうことがあります。
埋設する場所をあらかじめ下見をして決めておきます。下見をして決めた場所でも、川底を掘れないなどの理由により、埋設できない場所も出てきます。埋設する場所の1.5倍くらいの場所を決めておいた方が放流当日の作業がスムーズに行きます。発眼卵放流で最も重要なのは埋設場所の選定です。埋設方法は掘り下げ式と積み上げ式、その中間の3つの方法があります。日本の小渓流に埋設する場合は中間方式を使う場合が多くなると思います。放流場所の選定方法ですが、冬場の渇水期にも水量が確保できるところで常に水の流れがあるところを選びます。具体的には流心の少し横、プールの吐き出し口、落ち込みの脇などを選びます。水中をよく観察して落ち葉や砂の堆積しないところや大水が出たときに流されないところ、水量が確保できる場所を選びます。
発眼卵の入手先を選定します。自然の川に放流するため病気などの心配があります。信用のおける養殖業者から卵を分けてもらいましょう。水産試験場や漁協に紹介してもらってもいいと思います。卵の発眼日時、現在の積算水温を確認しておきます。だいたいの孵化の日がわかります。
放流当日、または前日までに卵を受け取ります。発眼卵は直射日光、振動に弱いので、クーラーBOXなどにガーゼを敷いてその上に穴のあいたビニール袋に入れた発眼卵を入れます。その上にさらにガーゼなどで保護をしてクーラーの中の温度が上がらないように少し氷を入れておきます。出来れば温度計などで監視しておくと良いでしょう。
◇WVB(放流する卵の数÷500+予備2~3個) ◇クレードルプランター(WVBを入れるかご) ◇ピンセット(出来れば竹、木製)(死卵を取り除くために使います。) ◇レンゲ ◇スプーン 計量カップ(200cc位で目盛りの細かいもの) ◇水温計 ◇バケツ(2~3個) ◇砂利取り用のかご(スーパーの買い物かごが便利) ◇クーラーBOX(発眼卵運搬用) ◇スコップ ◇肩まである手袋 ◇箱めがね ◇標識用目印 ◇筆記用具 ◇カメラ
入手した発眼卵の検卵、数量の確認を行います。発眼卵は紫外線に弱いため直射日光の当たらない日陰や橋の下などで作業を行うと良いでしょう。まず、川の水温を測り入手した発眼卵がこの水温になるように、少しずつ川の水をかけていきます。ゆっくりと時間をかけて作業を行います。急激な温度変化は卵に悪影響を及ぼします。
卵の温度が落ち着いてきたら検卵、数量の確認を行うためにレンゲ(中華料理に出てくるスプーン)などで卵を掬い計量カップに移します。このときに死卵を取り除きながら数を数えます。死卵の見分ける方法は目視で卵が白濁しているもの、眼がないもの、その他変形や破損があるものを死卵として取り除きます。この死卵の選別作業を行わないとWVBに入れたときカビなどにより他の正常な卵にまで影響が出るため慎重に行います。疑わしければ死卵として処理した方が無難でしょう。
WVBには500粒を入れるためカウントしながら計量カップに移します。500粒カウントしたら計量カップの目盛りを読んでおきます。次からは数量を数えながら入れなくても、死卵を取り除きながら計量カップの目盛りまで入れればおおよその数量の確認は出来ます。
WVBを組み立てておきます。検卵、カウントした発眼卵をWVBの一番上に入れます。卵が直接WVBにぶつからないように作業は水中で行います。500粒入れたらWVBの蓋を閉じてクーラーボックス、バケツなどに水と一緒に入れて埋設出来る状態のものを作っておきます。
クレードルプランターは金網などで制作します。網の目は1~2センチくらいの網の目で、大きさはWVB2個を入れて周りに砂利を入れられるくらいの大きさのものを用意します。
1~2センチくらいの砂利を採取します。埋設地点よりも下流で採取すると良いでしょう。買い物かごなどを利用したものにスコップで砂利を掬い良く水洗いしてゴミや砂などを取り除いておきます。用意した砂利をクレードルプランターの底に浅く敷き詰めその上にWVBを乗せます。残りの砂利をWVBの周囲に詰めていきます。最後にWVBの上にも敷き詰めます。このときも振動を与えないように作業は水中で行うと良いでしょう。
WVBをセットしたクレードルプランターを川底に埋設します。川底を20cmくらい掘り下げ、クレードルプランターを埋め込みます。プランターの上から水面まで十分な水深があることを確認しておきます。箱めがね等で確認しながら安定が良くなるように川底に置きます。プランターの回りにげんこつ大の石を並べ、最後にアンカーとして大きな石を上に載せ雪解け時にも流されないように固定します。
回収は約半年後となるため埋設場所に目印となるマーカーなどをぶら下げておきます。併せて川の地図、埋設場所の位置などをスケッチ、写真などにより記録しておきます。
放流当日の現在の積算温度を知り、放流する川の温度を測ることにより、おおよその孵化の日を推定することが出来ます。埋設するときに観察の容易な場所を一ヶ所決めておき孵化予想日以降、観察に行きましょう。元気に育っている稚魚を見ることが出来るでしょう。観察するためにバケツやプラスチック製の箱にWVBを移し観察します。観察が終わったら出来るだけ元の状態に戻すように、川に再放流します。
途中の観察より回収の日時を決めて埋設したプランター、WVBを回収します。時期は3月頃となりますが、雪などの事情により多少遅れが出るかもしれません。また、この時期は解禁となっている場所もありますので釣り人とのトラブルにならないように事前に漁協などにも連絡し、出来れば同行してもらうと良いでしょう。回収には大きな玉網でプランターごと掬い、観察できる所に移します。プランターの石の間やWVBの中に稚魚を確認することが出来るでしょう。また埋設場所の近くの水の流れが緩いところなどで元気に泳ぎ回っている稚魚の姿が観察できることでしょう。回収後は出来るだけ川を埋設前の状態に戻すようにします。